2013年1月3日木曜日

墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)に基づく墓地経営許可処分の取消訴訟における周辺住民の原告適格


墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)に基づく墓地経営許可処分の取消訴訟における周辺住民の原告適格は、「認められる」と考えてよいと思われる。_(:3」∠)_


[東京地判平成22年4月16日判時2079号25頁]


墓埋法関連の原告適格に関する代表的な裁判例としては、
①最判平成12年3月17日判時1708号62頁 →周辺住民の原告適格【否定】
②福岡高判平成20年5月27日LEX/DB28141382 →周辺住民の原告適格【否定】
③東京地判平成22年4月16日判時2079号25頁 →周辺住民の原告適格【肯定】


東京地判の裁判例は、墓埋法に基づく墓地経営許可処分に対する取消訴訟において、周辺住民の原告適格を認めた初めての裁判例でありまする。_(:3」∠)_

 (※因みに、周辺住民等の、いわゆる処分の名宛人以外の第三者の原告適格の有無を判断する際の考慮要素を規定した行政事件訴訟法9条2項が新設されたのは、[平成16年改正]によってです。)

平成16年改正前の上記判例①が周辺住民の原告適格を否定したのは割と理解しやすいでしょう。
問題は、改正後(行訴法9条2項新設後)の裁判例である②と③が、その結論を異にしている点でしょう。

結論が異なった原因(理由)は、周辺住民に認められた「法律上保護された利益」についての解釈が異なっていたからでしょう(まぁ…行訴法9条2項の解釈→根拠法令の趣旨の解釈なので当たり前なのだけれども…)。


福岡高判(上記②)では、
 墓埋法1条・10条1項、墓地経営許可処分等の要件が規定されている条例は、第1次的には、国民の宗教的感情や公衆衛生といった社会公共の利益(=公益)を保護するという点にその趣旨があると判示した上で、墓地や火葬場のような施設はいわゆる嫌悪施設であり、「嫌悪施設であるがゆえに生ずる精神的苦痛等から免れるべき利益」を個別的利益として保護するものと解するのが相当であると判示しました。


他方、東京地判(上記③)では、
 福岡高判平成20年判決とは異なり、墓地を嫌悪施設とは評価していない。
 したがって、福岡高判平成20年判決が解釈によって導き出した「嫌悪施設であるがゆえに生ずる精神的苦痛等から免れるべき利益」も認めていない。
 ただ、「違法な墓地経営に起因する衛生環境の悪化による周辺住民等の健康又は生活環境に係る著しい被害を受けないという利益」が周辺住民にとっての個別的利益、すなわち「法律上保護された利益」にあたるとの解釈を導き、原告適格を肯定しました。


東京地判では、「衛生環境」や「健康又は生活環境」といったものを「法律上保護された利益」として評価しているように読めます。
これは、周辺住民の原告適格を肯定した有名な判例である小田急高架化訴訟判決(最判平成17年12月7日民集59巻10号2645頁)と類似していることに皆様お気づきでしょう。
(因みに、小田急高架化訴訟判決では、「法律上保護された利益」として「騒音、振動等による健康又は生活環境に係る著しい被害を受けない利益」が想定されているっぽいですね。)



個人的には、根拠法令(ないし根拠規定)が想定している利益(=「法律上保護された利益」)が、裁判所の解釈によって変化するということには違和感を感じる。。

もちろん、法律の解釈は裁判所の役割の一つであるのだが。。
ただ、行政法におけるいわゆる「仕組み解釈」というものは、根拠法令やら関連法令やらの構造、規定ぶりを手掛りに解釈を行なっていく事なのだと思うのですが、通常の解釈とは異なり、仕組み解釈の場合には、究極的には一つの解釈にたどりつくものなのではないのか、という思いがしてしまうのです。_(:3」∠)_

自分でも何言ってるのかよくわかりませんが。。_(:3」∠)_


あとそれから、
周辺住民の原告適格を認めるかどうかの時に、「線引き」をどうするかも大きな問題(悩ましい問題)ですよね。
つまり、どこまでの範囲の住民に「法律上保護された利益」が認められるのか、「周辺住民」と言った時の『周辺』の画定ですね。_(:3」∠)_

判例は、関連法令で示された基準をそのまま採用しているようです。
例えば、小田急高架化訴訟判決では、関連法令である環境影響評価条例が定める「関係地域」をこの線引きの基準として採用しています。
また、東京地判(上記③)も、距離制限規定として定められている「おおむね100メートル」を線引きの基準とししています。

またまた個人的には、
裁判所が、周辺住民の原告適格を最終的に(具体的に)決するこの線引きの基準として、立法府や行政府の定めた基準をそのまま流用している点にも何かよくわからない違和感を感じるような気がしないでもない。。_(:3」∠)_
       _(:3」∠)_
          _(:3」∠)_






今日の昼ごはんは「うどん」でした。
それでは皆さん、今日も一日頑張りましょう。

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