2013年1月14日月曜日

『刑法総論解説 捜査実例中心』(幕田英雄、東京法令出版)

『刑法総論解説 捜査実例中心』(幕田英雄、東京法令出版)

検事の方が書かれた参考書です。
(※なにをもって「基本書」と言いうるのかが分からなかったので、一応「参考書」という言葉を使いました。)


 刑事法に関しては、比較的、実務家の方が書かれた書籍が多いように感じます。
 この幕田秀雄先生は、刑事訴訟法について『実例中心 捜査法解説』という書籍も書かれているのですが、非常に良い参考書だと思います。わかりやすいし♪♪(。・ω・。)


 さて、本書では学説の細かい対立は(意識的に)カットされています。
 したがって、学説についての細かな整理等は『刑法総論の思考方法』(大塚裕史、早稲田経営出版)で行うのが御薦めです。その上で、実際に答案作成時に用いる立場については本書をベースにするのが個人的には1番のオススメですかね。_(:3」∠)_
 小林充先生の書籍(立花書房のやつ)も非常に簡潔で良いのですが、個人的にはこの幕田秀雄先生の参考書がオススメですね。
 何より、読んでてオモシロイ♪♪─=≡Σ((( つ•̀ω•́)つ


 個人的な感想としては…
 本書を読んでいると、[刑法総論というものを犯罪捜査の手段・指針として “利用していく” という感覚]を強く意識できますね。
 ん〜・・・何を伝えたいかというと、刑法総論を「刑法学」として勉強するという感じではなく、実際に証拠収集していったりする際の捜査方針を決めたり、捜査上の問題点を把握するために、刑法総論というものを活用するという感覚ですかね。_(:3」∠)_

自分で言ってても何言ってんだか意味不明ですが(笑)。。
んん〜〜どう表現すればいいのか・・・ヾ(:3ノシヾ)ノシ

 現実問題として、刑法総論の知識を使うことで初めて〈捜査上の問題点は何なのか〉〈今後の捜査によって獲得すべき証拠は何なのか〉ということを正確に把握していくことが出来るわけです。実際の犯罪捜査活動では。(勿論、私自身は学生であって、実際の捜査活動がどーなってんのかまったく知りませんが、本書の初めのほうにこんなようなことが書かれています。本書25頁〜35頁参照)
 このように、刑法総論をあくまでも現実の捜査活動に引き付けて理解する・活用するという意識を強く持つことが出来ます。

 そして、私自身は、この考え方にまったくもって賛成です。
 実務家を目指して勉強している以上、このような意識を持って勉強することは非常に重要なのだと思っています(私自身は)。
 勿論、井田良先生のような精緻な理論も大変素晴らしく魅力的なわけですが、私自身は、刑法総論というものをあくまでも現実の犯罪捜査活動を円滑適正に実施していくための「道具」として理解していきたいわけです。
 ですから、本書をベースにしつつ、『事例研究 刑事法Ⅰ』(日本評論社)をひとつひとつ丁寧に潰していく。その際に、ある論点について深く知りたい場合には随時様々な論文・論稿、基本書の該当頁を参照していく。こんな感じで学習を進めていくのが私個人としては一番しっくり来るわけです。というか御薦めです。




 ま、偉そうにこんなことをグダグダ言ってきましたが、結局のところ人それぞれ好みや相性がありますからね(笑)(←事前の言い訳デス)_(:3」∠)_
 ちなみに、私の(ロースクール)周りでは、本書を使っている方を見たことはありません!!!(笑)なんででしょう!!!(笑)こんなに良い本なのにッッ!!!!(。・ω・。)




とりあえず、
以下に「はしがき」を引用させていただきマッスル_(:3」∠)_

本書は、1998年(平成10年)に発刊した『実例中心 刑法総論解説ノート』の改訂版である。
 発刊後10余年が経過し、この間の主な判例を紹介する必要が生じるとともに、この間、私自身が札幌及び千葉地方検察庁次席検事などとして遭遇した捜査実例等を踏まえ、本書の解説を、捜査実務により役立ち、よりわかりやすいものに書き改めたいとの思いが強まったこともあって、今回、大幅な改定を行った。同時に、本書の体裁や構成をオーソドックスな教科書スタイルに刷新したことに伴い、署名を『捜査実例中心 刑法総論解説』に改めたものである。
 本書の目的は、第1編 刑法総論入門の「はじめに」や「刑法総論学習に関するQ&A」で述べているとおり、「刑法総論理論を、捜査官の日常捜査実務に真に役立つ手順書(マニュアル)としてとらえ直し、捜査官に、分かりやすく提供する」ということにある。
 執筆方針は、『刑法総論解説ノート』のときと同じく、

① 実務との関連性が希薄な哲学的事項の解説は割愛するが、実務上重要な事項については、ハイレベルなことも解説する。 
② 抽象的解説にとどめず、実例に即した具体的な解説になるように努める。 
③ 解説は、可能な限り分かりやすいものにする。 
④ 捜査初動段階における捜査の方向づけなど捜査の指針となるべき事項も示す。
というものである。
 ②の実例に即した解説となるように、判例の事案だけでなく、筆者がこれまでに接した捜査実例も可能な限り紹介し、実例において理論がどのように適用されているかを説明するようにした。
 ③にいうわかりやすい解説になるように、解説文にはできるだけ見出しを付けたり、重要事項をまとめた「POINT」欄を設けるなどして解説の一覧性を高め、解説の理解を助けるような参考図等を必要に応じて挿入した。また、詳しい目次や重要索引を付けて学習の便宜を図った。
 ④に関しては、設問ごとに関連する捜査遂行上の留意点などを「アドバイス」欄で示すようにした。
 本書の利用方法についてであるが、初心者は、設問の順序に従って、入門から始まり、犯罪論、基本原理、罪数・刑罰と読み進めていただきたい。途中分からないところがあっても、一応最後まで読み終えて、再度、読み直せば、疑問が解消されることが多いと思われる。
 ある程度学習が進んでいる人は、参照記号(→参照)などを手がかりに学習範囲を広げていくやり方をとってもいいであろう。問題を含む捜査事案等に接した時に、目次や事項索引で関連事項を調べ、その事項を学習してもいい。捜査幹部や検察官は、「アドバイス」欄を順に読んでいき、関連する捜査遂行上の留意点を学ぶ方法をとってもよいであろう。
 本書が、刑法総論の学習を本格的に始めようとする捜査官、検察事務官や学生等、刑法総論を捜査マニュアルとして学び直したいと考えている捜査幹部、検察官等、そして捜査実務と関連させて刑法総論を深く学習しようと考える昇任試験受験予定者、司法修習生等の役に立つことを念願する次第である。

 本書は、この「はしがき」にも書かれているとおり、実際の捜査官や昇任試験受験予定者等をメインターゲットにしていると思われます。
 したがって、例えば本書549頁[設問35](間接事実による共謀共同正犯の立証)にはこのように書かれている。

 −設問−
 (1)部下の捜査官が、次のとおり、殺人事件の発生を報告し捜査についての指揮を求めてきたとして、どのような捜査事項についてどのように指揮したらよいか説明しなさい。
   「被疑者甲と被疑者乙は同じ会社の同僚であり、同じく同僚のVと会話中、甲、乙の両名はVと言い争いになり、甲、乙両名とVはお互いに『お前なんか殺してやる』と怒鳴りあううちに、甲が懐に隠し持っていた登山ナイフでVの胸を刺し即死させた。甲がVを刺したのを見ていた乙は『ざまあみろ』と言っていた」 
 (2)(1)の例が過激派の内部抗争であり、被疑者も共犯者も完全黙秘しているとした場合、どのような点に留意して捜査を実施したらよいか説明しなさい。

 このような形式の質問は、法科大学院の授業ではまずお目にかかれない。(お目にかかれないというか、そもそもお目にかかる必要がない(希薄な)ので当然なんですが。。)
 そして、このような質問に答えるためには、論文試験の問題文に散りばめられている様々な事情のうち、どこに着目しなければならないのか、ということが分かっていなければ答えられないわけです。
 逆に言えば、そういった部分を押さえている学生ならば、「どのような捜査事項についてどのように指揮したらよいか説明しなさい。」というような初めて見る形式での問いであっても、臆せずに答えられるはずなのである。

 上記設問の共謀共同正犯事案について言えば、「共謀」すなわち「犯罪の共同遂行の合意」が形成されていたといえるためにはどのような事情に着目すればいいのか、どのような事実であれば共謀立証の有力な間接事実といえるのか、という部分に着目しなければならないわけであります。(もちろん、殺意認定や共同正犯と従犯(幇助犯)の区別の判断でも同じですね。)

 規範を立てるだけでは合格しないわけで、きちんと事実認定を行なっていかなければならないわけです。


※刑事法については、実務家の先生として小林充先生(『令状基本問題』や『刑事事実認定重要判決50選』の編者でもありますし、刑法と刑事訴訟法の参考書(どちらも立花書房から出版されています)も執筆なさっています)が有名であり、私も非常に大好きなのですが、小林充先生は元裁判官です。
 元裁判官の立場からの理解と、検察官の立場からの理解と、両方知っておくと良い気がします_(:3」∠)_ 特に刑事訴訟法では両者のそれぞれの立場からの解説・分析を読んでみることが有用な気がします。。_(:3」∠)_



ま、ともかく本書はオススメです。─=≡Σ((( つ•̀ω•́)つ
一度本屋さんで手にとってパラパラとながめてみることを強く御薦め致します。

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